天気科
お医者さんは、自分の名前と、開業の場所と、内科外科などの診療科目だけしかＰＲしてはいけないそうだ。“便秘・不眠症治します”とか、“頭痛腰痛の方は当院へ”など、病名まじりの広告を出すと法律で罰せられる仕組みらしい。診療得意な病名はＰＲしていいのじゃないか。先日母が急に足腰が立たなくなった時そう思った。市民病院で座骨神経痛の診断を得たが、近所のかかりつけは内科医だ。どう養生すべきかなど細かいことが知りたくて釣友の医者（産婦人科）に聞いてみた。
「母が座骨神経痛で動けなくてね。近所の内科でもええやろか？」
「疑ってますね。あなたはマジナイの方が効くと思っているんじゃないの？ あっそう、あれは痛いのよ。大きい病院で検査した方がいいよ。それくらいしか私わかりません」と彼。
その後、あれこれ検査の後、当たるも八卦あたらぬも八卦と、とある有名気孔術師の道場へでかけた。ギックリ腰や足腰の捻挫などは一発完治で評判高い先生だ。結果はストンと治って母は以前に増して元気になった。母は治った今の間に杖の稽古をしておくと言って、目下、好みの杖を物色中である。
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母は元気になったが、かみさんがダメである。かみさんも一発完治先生のもとへ連れて行こうと思う。彼女は私の見立てでは低気圧症だと思う。彼女の頭が痛くなるのは決まって低気圧が接近中の時である。釣り行き時の天気の善し悪しは、彼女に頭が痛いか否か、そしてその程度はいかほどかを問えば判る仕掛けになっている。連れ添って何十年にもなるが、この頭痛天気予報は未だかつて外れたことがない。九州地方に雨が降りだす頃に一番頭が痛く、雨雲が近畿地方を覆うようになると痛みは少しやわらいで、雨が降ると痛みは取れるようである。
昔、この頭痛は私の釣りのせいだと思っていた。私が釣り行きすると決まって彼女は頭痛になるように思われた。でも最近は簡易気象台である。もし彼女の頭痛が気孔術で完治すれば、この後私は釣り行き時の気象判断に不便をきたす。彼女の頭痛は温存すべきか治すべきか。
それにしても気孔術は低気圧症にも効くだろうか。素人判断だが、頭痛は、脳圧が外気の急な気圧低下に追いつけぬために起こるのだと思う。となれば、対策は、脳圧を気圧低下に同調させればよいわけである。手っとり早くは頭蓋骨に外気に通ずる通気孔を開ければよかろう。となればこれも気孔術の世界か。
まじめな話、高齢者が老衰で死ぬのは断然低気圧接近中の時が多いと聞いている。医学の方でも、内科外科などに加えて天気科を始めた方がよいのではないか。天気の健康におよぼす影響は実に大きい。まさに一科をたてるに値する。